ICTの活用でアクティブラーニングを促す

関西学院大学のスクールモットー"Mastery for Service"を中核に、大学改革を推進

創立120周年を迎えたのを機に、十年計画で大学改革を開始した関西学院大学。 ICTを活用して、学生のアクティブラーニングを強化。 新たにスタートさせた国際化に対応したプログラムも、 文部科学省の推進事業に指定されるなど、高く評価されている。

企画室 総合参事
グローバル化推進本部事務局
小野 宏 氏

国際学部教授
教務機構高等教育推進センター長
平林孝裕先生

スクールモットーを柱に、大学改革を推進

 「今、大学の教育の質が問われています。大学教育は、社会に役立っているのか? 企業が求める人材像と、大学教育が輩出する人材とで、ミスマッチが起きているのではないか? そう自問自答してきました」と、高等教育推進センター長を務める平林孝裕・国際学部教授は言う。確かに今、大学新卒者の離職率は極めて高い。厚生労働省が発表したデータによると、大学新卒者の32・4%が、卒業後3年以内に離職しているのだ(平成23年3月卒業者のデータ)。「大学教育のあり方を見直す時が来た」と、平林教授は力説する。そこで、関西学院大学では、2009年に創立120周年を迎えたのを機に、大幅な大学改革に乗り出した。

 「我々のような私学は、特徴を前面に押し出して他大学との差別化を図らなければ、少子化の今、生き残れません。大学改革を始めるにあたり、関西学院のアイデンティティは何かと熟考しました」

 そのアイデンティティは、スクールモットーにあった。関西学院のスクールモットー"Mastery for Service"。「奉仕のための練達」とも訳されるこのモットーは、「隣人・社会・世界に仕えるため、自らを鍛える」という関学人のあり方を示している。

 このスクールモットーをベースに、改革プランである「新基本構想」を練った。そして「"Mastery for Service"を体現する、創造的かつ有能な世界市民を育むことを使命とする」が、「新基本構想」のミッション・ステートメントとして決定された。

 「このミッション・ステートメントの中に、関西学院の存在意義と使命を凝縮させました」とは、企画室の小野宏・総合参事だ。

 「関西学院は、この10年で二つの学校と合併し、国際学部や教育学部など、新しい学部や研究科が開設されました。それに伴い、学生も教員も急増しています。関西学院のアイデンティティを薄れさせないためにも、ここであらためてスクールモットーを構成員全員が再確認することになったのです」

 そして、「新基本構想」で達成すべき目標を、六つのビジョンとして定めた。「KG学士力」の高い質を保証する。多文化が共生する国際性豊かなキャンパスを実現する。詳しくは図(→ 11)を参照して欲しいが、大学教育の質を向上させるとともに、大学組織も改革していくことを謳った。

ICTでアクティブラーニング

 さらに、具体的な改革計画である「新中期計画」が定まり、2009年から改革を開始した。これは、十年計画であり、関西学院が創立130周年を迎える2019年に完遂されることになっている。その「新中期計画」のメインテーマの一つに、ICTが挙げられた。

 「学生が学習しやすい環境を整え、改革ビジョンの一つである『KG学士力』を高めるのに、ICTは有効と考えました」と、平林教授。その一環として、2010年度にはLMS(Learning Management System/学内呼称LUNA )が導入された。以前は紙ベースで行っていた授業の資料および教材の配布や、レポート提出、テストの提出と返却などを電子化することで、効率化が図れたという。

 だが、LMS最大の利点は他にあると、平林教授は解説する。

 「LMSを使えば、学生は場所を選ばず学習できます。たとえば、掲示板機能を使って、授業時間外でも教員や学生とディスカッションしたり、授業を受ける前に配布された教材で学習したり、と。LMSには、学生のアクティブラーニングを促す効果があります」

 導入2年後の2012年度には、学生の9割がLMSを活用するほど、学内に浸透した。

 LMS以外にも、学生がアクティブラーニングできる環境整備に力を入れた。2014年には、西宮上ケ原キャンパスに「ラーニングコモンズ」を開設。これは、学生が自主的に学習できるスペース。自由に集まって話し合えるスペースや、グループでディスカッションや資料作りなどを行えるスペースが設けられており、ノートPCやプロジェクターなど、グループ学習に必要なICT機器も用意されている。

 「ラーニングコモンズは、予想以上によく利用されています。稼働率は高く、学習ルームは常時8~9割が埋まり、貸出用ノートPCも時間帯によっては順番待ちという状況です」と、平林先生は言う。

 また、神戸三田キャンパスには、同様のアクティブラーニング・スペースを持つ「アカデミックコモンズ」がある。校内LANやプロジェクター、プリンターに電子黒板などのICT機器が完備されており、グループ学習やプレゼンテーションなどが行えるスペースが設けられている。平林先生によると、「将来はタブレット端末なども配備したい」とのこと。

 語学教育でもICTが活躍している。2014年には、CALL教室およびPC教室のシステムを一新した。CALLシステムである『CaLabo EX』、PC教室での授業支援システム『CaLabo LX』、ICT運用支援システムの『ExtraConsole』、ハードウェア画像転送システムの『S300-AV』といったチエル製品が導入された。

 平林教授は、「今後もICTは積極的に活用していくつもりです。ICT活用の実践を積み重ねてノウハウを蓄積し、大学改革に活かしていきたいと思います」と、ICTへの期待を語ってくれた。

教育の質を高め、国際化に対応

 「新中期計画」のメインテーマには、「国際化」と「教育」も入っており、この分野でも着々と改革が進んでいる。その一つが、日加大学協働・世界市民リーダーズ育成プログラム『クロス・カルチュラル・カレッジ』(以下、『CCC』)だ。これは、カナダの大学との協働プログラム。学生は日本とカナダを行き来しながら、海外の学生とともに学んでいく。異文化理解や国際関係に関する講義や、語学力を集中的に鍛える講義など、多彩なプログラムが用意されており、グローバル社会に貢献できるリーダーシップをもった世界市民の育成を目的としている。

 特筆すべきは、協働するカナダの大学の豪華さだろう。トロント大学、クイーンズ大学、マウント・アリソン大学と、世界でも屈指の大学が並ぶ。

 「『CCC』は、関西学院の看板プログラムの一つであり、他大学にも注目されています。トロント大学は、カナダのトップ大学であり、そうした優秀な学生とともに学ぶことで本学学生も、大きな刺激を受けます。座学だけでなく、企業でのインターンシップや、企業から提示された経営課題の解決にあたるキャリアセミナーなどにも参加できます」と小野総合参事。

 『CCC』は、教育の高い質を保証するとともに、国際化という改革ビジョンにも叶っている。新入生の獲得競争においても、この『CCC』は関西学院大学の大きな武器になるだろう。ちなみに、この『CCC』は、文部科学省の2011年度『大学の世界展開力強化事業』にも採択され、5年間の財政的支援を受けている。

 文部科学省の助成を受けているという点では、『実践型"世界市民"育成プログラム』にも触れておきたい。2012年度に文部科学省の『グローバル人材育成推進事業(現・経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援)』に採択され、財政的な支援を受けているこのプログラムでは、「グローバルリーダー・コース」「グローバルエキスパート・コース」「グローバルシティズン・コース」の三つのコースを用意。学生はコースを選択し、そのコースに合った語学や国際交流、キャリアデザインなどに関する授業を受けられるようになっている。

 さらに、昨年9月には、文部科学省の『スーパーグローバル大学創成支援』事業に、関西学院の構想「国際性豊かな学術交流の母港『グローバル・アカデミック・ポート』の構築」が採択された。これは、学生や教職員が海外と頻繁に行き来して協働する環境を整え、「"Mastery for Service"を体現する世界市民の育成」を実現するもの。その一環として、複数の大学院研究科(修士)が共同で「国連・外交コース」を設置し、国際機関職員や外交官の育成を進めている。さらに、数値目標として、学生の協定校への海外派遣数を現在の年間約900人から2500人に増やし、日本一になることも掲げている。

「高大接続」も一段と強化

 大学入試改革への対応も進んでいる。この春には、「入試センター」が「高大接続センター(仮)」と改称改組される予定。

 さらに、「関西学院大学では、これまでも多様な高大接続を他大学に先駆けて実施してきました。たとえば、入試でも、AO入試・推薦入試などの割合を増やしており、語学力に秀でた高校生や留学経験のある高校生などが出願できる『グローバル入試』も行うなど、様々な入学の機会を設けて、多彩な学生を集めてきました。来るべき大学入試改革では、まさにこのような多様な学生の確保が求められます」と、小野総合参事は話してくれた。

 学校法人関西学院には、「スーパーグローバルハイスクール」にも指定されている関西学院高等部や、英語教育に強い関西学院千里国際中等部・高等部、そして関西学院大阪インターナショナルスクールなど、特色のある学校を保有している。今後はこういった院内の高校だけでなく、院外の高校との接続を今以上に強化していく考えだ。

 関西学院ならではのアイデンティティを発揮して大学改革を推し進め、高大接続の準備もいち早くスタートした関西学院大学。大学入試改革が始まれば、その個性はさらに輝き、存在感を増していくに違いない。

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