全校体制で臨む学習規律の徹底とICT活用

学校ルポ 沖縄県恩納村立 山田小中学校

左:研究主任・学力向上推進担当 大城 智紀 先生 情報教育主任・指導法改善 (4年・5年・6年算数)・5年社会
右:校長 地下 良哉 先生

学校全体の、飛躍的な学力向上。その舞台裏を探る。

沖縄県恩納村立山田小中学校は、『平成26年度(2014年度)全国学力・学習状況調査』で沖縄大躍進の原動力となった注目の学校だ。地下良哉校長を筆頭に、全校体制で取り組んだ結果が学力向上にもつながった。研究主任・情報教育主任として現場をリードしてきた大城智紀先生と、管理職として大城先生を支えた地下校長に、今に至るまでの取り組みを伺った。

1年目は「全校体制」の土台作り

 指定研究校の目標は、ふたつ。

(1) 日常的なICT活用
(2) 学習規律を土台とした、日常的な

授業改善

 この目標に全校体制で取り組むための土台作りに1年をかけた。

自分の学級から学習規律の徹底を

 2012年4月に山田小中学校に赴任した大城智紀先生は、5年生の担任になり、担任学級の学習規律が整っていないことに気がついた。学校全体にも、指導にバラ付きがあった。ICT活用と同時に、学習規律を徹底しなければいけないと考え、自分の学級の学習規律を徹底することから始めた。

 「授業では、実物投影機とプロジェクターを使っています。教科書を拡大して、答えの文に線をさっと引くこともできます。何より、今日は○○さんが積極的に手を挙げてくれました」。大城先生は、授業の進め方や、児童の良さを伝える学級通信を、頻繁に発行した。保護者との信頼関係と児童の自己肯定感を高めるためであった。その数は1学期で80号を超えた。

 大城先生の日々の積み重ねにより、5月の授業参観では、子どもたちの成長ぶりに保護者が驚いた。

目指すゴールを常に頭に描いて

 「わかる・できるを保障して、児童に自信を持たせる。すると、規律も整う。学習規律と基礎・基本の徹底の上でこそ、新たな学習活動が成立します」。東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授の教えだ。大城先生は、堀田教授から学んだことを愚直に実践し、教授が指導した学校を参観し、目指すべき学校のゴールを頭に描き続けたという。

「全員で参加」の校内研修

 1学期の終わり、大城学級で研究授業が行われた。学習規律の大切さと、実物投影機とプロジェクターを活用した授業のイメージを共有するためだ。

 ここでイメージのついた授業を、夏休みに先生方に体験してもらう。

 2学期からは、小中合同で研究授業を互いに参観する校内研修を始めた。

 校長は、目指すゴールをそろえるために、研修全てに、小中全教員参加を義務づけた。夏休みに開催された、『フラッシュ型教材活用セミナー』にも、校長を始め、教員全員で参加した。

3学期は次年度の準備、週時程の変更

 3学期には、基礎・基本指導を組み込むため、次年度の週時程を変更した。『漢字と計算、基礎・基本の時間』を朝20分、『国語と算数チャレンジタイム』は午後25分。登下校の時間を変えないために、休み時間を5分に削った。

 校内研修の積み重ねで、全校体制への足並みがそろい、実物投影機とプロジェクターの活用が定着しはじめ、無理の無い週時程の決定もされ、次年度への準備が整った。

2年目、目標の定着へ

春休みに教材の選定

 2年目を迎える前の春休みに、新しい教材の選定を始めた。全学年の学校教材やノートを同一会社に統一したのは、全校での安心・安定感のためだ。

4月、教室インフラの統一化

 大城先生は、前年度より、前任の校長先生のサポートのもと、教育委員会へ予算見直しの申請をした。小中それぞれふたつあったPC教室をひとつにまとめることで、各教室のICT環境を整えたかったのだ。PC教室2教室にかける予算で、PC教室1教室・実物投影機・プロジェクター・電子黒板・デジタル教材を小中各教室に、そして教員用のPCもそろえた。

 次はその配置だ。最初の整備が肝心である。大城先生は、春休み返上で、配線工事からすべて現場に入り、窓からの光の入り方や、授業の動線を考え、配置を決定した。どこでも同じ指導ができるよう、全教室の配置を統一したのだ。

 また、この先5年間を見越して、iPadとiPad miniの導入もここで決定した(児童用→ iPad62台・iPad mini22台 教員用→ iPad mini16台)。

型をきめ、全校で指導法を確立

 フラッシュ型教材の活用と電子黒板の使用が、いよいよ全学級で本格実施された。大城先生はセミナーや自身で学んだことをフルに活かし、帯の時間で実演をした。提示の仕方・テンポ・タイミング、全員ができるようになるまで手厚くサポートもした。指導法が確立し、パターン化することで教員も児童も日々継続できるからだ。

堀田教授・土井先生の指導

 堀田教授からは、山田小中学校各先生の日常的なICT活用と授業改善に向けた指導を受け、「フューチャースクール推進事業実証校」であった徳島県東みよし町立足代小学校の土井国春先生からは「教科書読解を根底に捉えたICT活用」の講義を受けた。

 ここで、学校全体の、授業改善への意識が一気に高まった。大城先生は、その意識を保つため、授業のサポートにさらに力を入れるようになる。

11月の公開授業は、2年間の集大成

 チエルWEBマガジンに掲載されている2013年11月1日の公開授業は、2年間の集大成であった。学習規律が整わず、授業進行が難しかった当時の5年生が、合唱コンクールでも2年連続で地区ブロック代表に選ばれるまでに成長した。「学習だけでなく、児童の心も成長したことを感じた」と地下校長は振り返る。

小中全教員が授業改善を認めた

 小学校・中学校で互いに授業を見合うことで、日々の授業改善に役立ててきた。学校の教員へのアンケートでは、ICTが役に立っているかという質問に対し、「とても思う」が85%「よく思う」が15%と、全員がICT活用による授業改善を認めた。

 本校の成功により、恩納村の他の4校も、山田校型ICT環境に移行することになった。

A:実物投影機の活用が定着しはじめた
B:日常的に使用できるフラッシュ型教材を選んだ
C D:漢字指導を同じ指導法で全学級で実施した
E:この先5 年間を見越してiPadも導入した

授業の導線を考えて配置された、山田校型ICT環境

3年目、日常的なICT活用を実践

全校体制で取り組んだ結果

 2年半が経ち、公開された授業は68回に上った。ICT機器が整備されて学力が向上したのではなく、授業改善のひとつとしてICTも活用してきた結果、授業が変わり、児童も変わり、土台となる学習規律も整い、保護者の信頼を得たこと、また学校教材の活用と家庭学習の連動にも好影響を与えた。

 また、堀田教授をはじめ、外部の支えも大きかった。そして何よりも、「全校体制で取り組んだ結果」と地下校長も、大城先生も確信している。

授業評価シートとiPad miniの活用

 3年目、『平成26年度(2014年度) 全国学力・学習状況調査』において、小学校は全国平均を超えたが、中学校は全国平均に追いついていない。

 活用に関するB問題においては、基礎・基本が十分に定着していないことから国語、算数とも全体的に苦手とする児童も多いようである。

 そこで今年度は、
①学習の土台となる学習規律の徹底
②基礎・基本の定着を目指した学習指導の工夫
③日常的な授業改善を行い、その手段のひとつとしてICTを活用
④帯時間を利用した学習指導法の充実
⑤小中連携による、校内研での授業改善
を中心として、基礎・基本の確実な定着や、内容をしっかりと習得させる学習指導法を確立させていく方針だ。

 公開授業においては、「授業評価シート」を取り入れ、参観者は、授業の際に、「iPad mini」を駆使して、授業の重要な場面をカメラで撮影し、それをもとに、授業改善などに有効活用している。

 大城先生の指導を1年目に受けた5年生が、現在中学1年生となり、中学校の雰囲気も変わって来た。「この勢いで、中学全体も大きく変わることを期待している」と、地下校長は笑顔で話してくれた。

山田小式「指差し棒」
「ICT が教育に入ると、情報量が多いので、指差し棒は必須です。指差し棒が無いと、生徒の方を向いて話せても、電子黒板の前を体で覆ってしまうことに気づき、100円ショップで材料を集めて作りました」とは、大城先生の談

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