「私立大学等改革総合支援事業」にみる私学助成の現状

文部科学省〈予算〉

文部科学省 高等教育局私学部私学助成課 高橋 洋平

私立大学等の教育や研究条件の維持向上、在学生の修学上の経済的負担の軽減、そして経営の健全化等に資するため、国や各都道府県は私立大学への助成を行っている。なかでも、「私立大学等改革総合支援事業」は、教育の質的転換、地域発展、産業界・他大学等との連携、グローバル化といった改革に全学的・組織的に取り組む私立大学等に対する支援の強化を図るものだ。文部科学省高等教育局私学部私学助成課・課長補佐の高橋洋平氏に、「私学助成」の現状についてお話を伺った。

私立学校の経営基盤の安定と質の高い教育の継続のために

 経営基盤を安定させ、質の高い教育を継続的に実施していくために、私立学校の運営費に対して国や都道府県が交付する補助金として「私学助成」は創設されています。その目的は①私学の教育条件の維持向上、②学生等の修学上の経済的負担の軽減、③私学経営の健全性の向上--にあります。

 2015年は「私学助成」にとって節目となる年でした。1970年に私学助成が創設されて45年、また、1975年の私立学校振興助成法成立から40年を迎えたのです。私学助成の予算は私立学校の教育の質を高め、支援していくことを目指して徐々に拡充しており、2016年度の私学助成の予算案は4、303億円(前年度比4億円増)でした。その内訳は、「私立大学等経常費補助金」が3、153億円、「私立高等学校等経常費助成費補助」が1、023億円、「私立学校施設・設備補助金等」が104億円、「私立大学等教育研究活性化設備整備費補助金」が23億円となっています。

 「私立大学等経常費補助金」は、私立大学等の運営に必要な経常費補助金を充実し、建学の精神や特色を生かした教学改革や経営改革等に取り組む大学等を重点的に支援するものです。私立学校振興助成法によれば、私立大学等の経常的経費のうち、2分の1以内を補助することができる規定がありますが、実際には国の財政事情による予算額の制約もあり、約1割程度の補助にとどまっているのが実情です。2014年度の補助割合は10.1%でした。

 「私立大学等経常費補助金」は「一般補助」と「特別補助」に分類されます。「一般補助」とは、各学校における教職員数や学生数等に所定の単価を乗じて得た基準額を教育研究条件の状況に応じて傾斜配分するもので、「特別補助」とは、教育研究に関する特色ある取り組みに応じて配分するものを意味します。2010年には一般補助と特別補助の組み替えがあり、従来の特別補助の対象となっていた取り組みのうち、共通的に行われるようになった活動を「新たな一般補助」として組み替えて支援するようになりました。そして、その他を廃止して「新たな特別補助」を設けています。2009年度予算3、222億円のうち、一般補助2、120億円、特別補助(一般補助移行分)697億円、特別補助406億円でしたが、この組み替えによって、2010年度は3、209億円の予算のうち、新たな一般補助2、812億円、特別補助398億円となりました。一般補助の割合がこれにより66%から88%へと高まっています。

図1 一般補助と特別補助の組替

従来の特別補助の対象となっていた取組のうち、共通的に行われるようになった活動を「新たな一般補助」に組み替えて支援。その他は廃止し、「新たな特別補助」を設ける。

表1 私立大学等における経常的経費と経常費補助金額の推移

※平成24、25、26、27、28年度は復興特別会計を除く。

「私立大学等改革総合支援事業」の創設と今後

 2013年度には、私学助成の改善とさらなる充実を図り、私立大学の質の促進や向上を目指して、「私立大学等改革総合支援事業」がスタートしました。私立大学は教育の特色もさまざまであり、その質を高めていくための〝メリハリある〟配分を強化する必要があるとされたのです。これにより、すべての学校法人に助成金を交付するのではなく、教育研究や財務状況に応じて、「建学の精神を生かした学士課程教育の質向上」「地域再生の核となる大学づくり」「産業界などのステークホルダー、国内外の大学等と連携した教育研究」といった全学的な改革を推進している私立大学に対して、経常費・設備費・施設費を一体として、より重点的に支援を行うこととしました。

 2015年11月には、2015年度の支援対象校として、延べ計1、684校(実数計746校)から申請があったうち、延べ計626校(実数計421校)を選定しました。なお、支援対象校は、四つのタイプごとに「私立大学等改革総合支援事業 調査票」で、各大学の取り組み状況を問う設問を設定し、その回答を点数化したうえで、「私立大学等改革総合支援事業委員会」の審議を踏まえて選定することとしています。

 2015年度の予算総額は201億円であり、その内訳は経常費補助144億円、活性化設備費46億円、施設・装置費11億円となっています。経常費補助144億円には一般補助、特別補助の両方が含まれています。調査票の回答状況を経年比較してみると、総じて各大学の取り組みが進んでおり、結果として、選定ラインは前年度を上回るものになりました。これは、基盤的経費の〝メリハリある〟配分により、私立大学等における取り組み水準の底上げを図るとする、本事業の意図するところであり、事業の成果は確実に上がっていると言えるでしょう。

 ここで、本事業の四つのタイプを紹介します。

 タイプ1「教育の質的転換」...338校を選定。これは、全学的な体制での教育の質的転換を支援するものです。全学的教学マネジメント体制の構築やアクティブラーニングの充実、シラバスの改善、学修支援体制の整備、学生による授業評価結果の活用、学生の学習時間等の把握といった取り組みを評価します。

 タイプ2「地域発展」...98校を選定。これは、地域社会への貢献や社会人の受け入れ、生涯学習機能の強化等を支援するものです。自治体との包括連携協定の締結や地域社会と連携した地域課題解決のための教育プログラム、地域の学校等への教育支援、子育て支援、社会人教育プログラムの策定などを評価します。なお、都市部の収容定員8、000人以上の大規模大学は対象外としています。

 タイプ3「産業界・他大学等との連携」...45校を選定。これは、産業界や国内の他大学等と連携した高度な教育研究を支援するものです。産業界との連携でいえば、教育面を含む産学連携体制の構築、企業等との教育プログラムの共同策定・実施など、他大学等との連携でいえば、交流協定に基づく単位互換の実施・交流の実績などが評価されます。

 タイプ4「グローバル化」...74校を選定。これは、語学教育強化、国際環境整備、地域の国際化などの多様なグローバル化への取り組みを支援するものです。グローバル化対応ポリシーの策定は必須条件とし、その他に実践的な語学教育や教員の英語力強化をはじめ、海外大学等との交流協定、外国人教員・学生の比率などを評価します。

 それぞれのタイプの選定における選定ラインは、タイプ1が106点中88点(前年度は78点)、タイプ2が56点中40点(前年度は43点)、タイプ3が50点中29点(前年度は27点)、タイプ4が98点中59点(前年度は46点)でした。

図2

表2 平成27年度私立大学等改革総合支援事業 選定状況(総表)

※( )内は昨年度[26年度]

 これまでに選定された大学の具体的な取り組みとしては、次のような事例があります。タイプ2の選定を受けた石巻専修大学(宮城)は、被災地復興に向けたボランティア活動の拠点となり、被災の記憶をとどめるためのアーカイブ化などの「防災」と「復興」に関する事業を行うとともに、地域の小中高と連携した「復興教育」を展開しています。タイプ4に選定された共愛学園前橋国際大学(群馬)は、KYOAI GLOCAL PROJECTとして、地域社会を牽引するグローカルリーダーの育成を目指しています。少人数クラスを基本とし、授業の75%をアクティブラーニング要素を含むものに改善し、「ユビキタスキャンパス」として、いつでも、どこでも、ネットワークを利用できる環境を整備しました。複数のタイプへの申請も可能なため、なかには三つまたは四つのタイプで採択された大学もあり、各大学が本事業による支援を受けながら、特色を生かした教学改革に取り組んでいます。選定結果は公表していますので、各大学における教育研究体制の現状を内省し、平均点や他大学の取り組み状況を参考にしながら、今後の教学改革に結びつけていっていただけたらと考えています。

 本事業の選定にあたって、「私立大学等改革総合支援事業委員会」が審議を行います。委員長には明治大学前学長の納谷廣美先生を迎え、多くの大学の先生方に委員を務めていただいております。2013年度の事業開始当初から比べると、年々、各大学とも改革の成果が上がり、設問に対する得点も高くなってきておりますので、今後はさらに設問の内容を高め、各大学における教育研究体制や改革の取り組みの質をさらに押し上げていくことにつなげていけたらと考えております。なお、このたびの選定にあたり、納谷委員長も「本事業には全私立大学等の約8割にあたる746校から申請があったことからみても、前年度同様に大学等の改革意欲は十分感じられた。評価項目(設問)への回答状況を経年比較してみると、総じて実施率の上昇が見て取れ、結果として合計得点による選定ラインを押し上げている。これは、各大学等に大学改革に資する取り組みを促す、まさに本事業のねらいとするところであり、非常に好ましい結果と言える。大学改革を着実に進めるためには、国としての継続的な支援が不可欠であり、来年度も本事業を継続・充実する方向で検討すべきである」と所見を示しています。

 また、今後については「具体的な目標や行動計画を策定した上で、進捗状況のフォローアップを行い、その結果を次の改善につなげることが重要であり、PDCAサイクルの確立に向けて、本事業を大いに活用していただきたい」とし、取り組みの「質こそ肝要」であり、事業選定をゴールとせず、「次なる改革への通過点」ととらえ、取り組みの深化を追求していただきたいと述べています。また、本事業の申請や事後評価については、「補助金担当者だけでなく、教学担当者などが学内関係者との認識を共有させ、学内一体となって取り組んでいただきたい」としています。

「私立大学等教育研究活性化設備整備費補助金」とは?

 「私立大学等改革総合支援事業」により支援対象校に選定された私立大学等においては、取り組みの実施に必要な設備費がある場合、文部科学省に申請書等を提出すると、認められた諸経費については「私立大学等教育研究活性化設備整備費補助金」により、補助を受けることができます。補助金基準額や上限額はありません。

 補助を希望する大学は、「私立大学等改革総合支援事業」のタイプごとに「私立大学等教育研究活性化設備整備事業」の申請を行います。申請にあたっては、申請提出書、申請書、申請カード、入札結果のわかる書類もしくは3社以上の見積書が必要です。また、タイプ2の場合は地方自治体との協議の内容がわかる資料、タイプ3の場合は企業または他大学等との協議の内容がわかる資料も同時に提出します。これらの書類を学校法人の理事長から文部科学大臣宛に郵送することになります。

表3 平成27年度私立大学等教育研究活性化設備整備事業採択校の概要

表4 平成27年度私立大学等教育研究活性化設備整備事業

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