「グローバル」かつ「グローカル」をけん引する人材を育てる、バリエーション豊かな教育メソッド

文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール」をはじめ、同省の「スーパーグローバルハイスクール アソシエイト校」、大阪府の「グローバルリーダーズハイスクール」に指定されている大阪府立四條畷高等学校。マインドの醸成から具体的なプログラム内容まで、グローバル人材育成に向けた取り組みについて話を伺った。

大阪府立四條畷高等学校
1903年に旧制中学として設立され、110年以上の歴史を誇る大阪府立四條畷高校。近年は『守る伝統から創る伝統へ』というキャッチフレーズのもと、ボーダーレスに活躍できるグローバルリーダーを育成するための、数々の取り組みが国内外で進められている。約3万5千人にも及ぶ卒業生の中には、さまざまな分野で国境を越えて活躍する人材も少なくない。
〒575-0035
大阪府四條畷市雁屋北町1-1
TEL072-877-0004

国内外で展開される多彩な異文化体験プログラム

 グローバルリーダー人材育成に向けて様々なプログラムを展開する大阪府立四條畷高校。その契機になったのは、2011年に大阪府で10校が指定された「グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)」の1校に選ばれたことだ。同年から、2年生全員を対象として台湾への修学旅行がスタート。台北市内で4日間を過ごし、観光目的だけではなく、現地の高校生や大学生と英語を使った交流が行われる。

 また、1・2年生の中から希望者を募ってのオーストラリア研修も始まった。毎年3月になると、クイーンズランド州立バンダバーグ高校に10日間、ホームステイでの留学を行うほか、バンダバーグ高校からも隔年で高校生がやって来る相互交流だ。交流開始から5年が経過した現在は姉妹校協定が結ばれ、今後はさらに発展的な交流が進められる見込みだ。直近にあたる16年3月の研修に際しては、事前研修として英語集中講座が開かれるなど、効果を最大化するためにプログラムのブラッシュアップにも余念がない。

 また、12年に文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定された同校では、15年から「ドイツ先進的エネルギー研修」も開始。再生エネルギーの先進国といわれるドイツに8日間、15名の生徒を派遣するものだ。ドルトムントでホームステイをしながら、家庭レベルのエコな取り組みにも触れ、帰国後には四條畷市が主催する市民講座でポスター発表なども行う。また、SSHに関わるプログラムの一環として、地域の小学校における児童向け実験指導を行う機会も設けられている。エネルギーを研究テーマにグローバルな学びを進めつつ、ローカルな取り組みにも注力する方針は、清水隆校長が推し進める「グローカル」の取り組みそのもの。「日本国内で生活をする人の国籍は多様化しており、〝内なる国際化〟もさらに進展しています。グローバル社会に目を向けながらも、地域に根ざした〝グローカル〟な取り組みを推進していきたいですね」と語る。

 さらに、14年に始まったのが、医師や看護師を目指す生徒向けの「ベトナム医療ボランティアツアー」。これは、同校の卒業生である服部匡志医師が、10年以上にわたってベトナムで白内障の無料治療を行ってきた経緯があり、その治療プロジェクトに生徒が参加するものだ。事前研修では、青年海外協力隊のメンバーとしてベトナムの病院での活動経験のある看護師の講演を聞くほか、ベトナム語会話の基礎も習得。現地では、手術の見学や服部医師の手伝いも体験。言わば、海外インターンシップだ。

 こうした11年以降の取り組みにより、生徒のグローバル意識が高まりを見せる中、14年には「スーパーグローバルハイスクール(SGH)アソシエイト校」の指定を受けた同校。海外での異文化体験・国際交流はもちろんのこと、国内でのグローカル活動も活発になってきている。

 そのひとつ、関西外国語大学で学ぶ留学生と交流する「国際交流キャンプ」は、終日英語で過ごしながら、ワークショップやプレゼンテーションに挑むプログラム。ここでは、もはや英語は「学習の対象」ではなく、コミュニケーションをとるためのツールだ。生徒にとっては、英語で考え、想像力や思考力を鍛える絶好のチャンスになっているという。

 また、アメリカ合衆国の「高校生外交官」として来日した20名と、府立高校生20名とが交流し、ディスカッションなどを行う大阪府庁でのイベントにも同校から5名が参加したほか、近隣の府立高校で行われている交流事業に生徒代表が参加することもあるという。

あくまでも英語はひとつの"手段"

 「多彩なプログラムを経験することで、生徒は外国人に対して臆することなく積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢が身についてきていると実感しています」と、清水校長は手応えを語る一方で、同校では数々のプログラムを通して、生徒の英語力向上を目指すことはもちろん、自分自身の英語力を把握することも意義のあることだと捉えている。「あまり話せなかった」「もっと英語を使いこなせるようになりたい」「単語力不足を感じた」といった思いが、さらなる英語学習へのモチベーションとなっているという。

 ただし、グローバル教育の真髄は、決して「英語力の向上」ではない。かと言って、少なからずの生徒が抱くのが「グローバル人材とは何か」という疑問であるのも確か。それに対し清水校長は、ことあるごとに同校なりの〝真髄〟を説く。それは、同校が長年にわたって目指してきた生徒像である「自ら学び、自ら考え行動する、心豊かでバランスのとれた、国際社会に貢献する人間力あふれた人材」。これこそが、グローバル人材を表す言葉なのではないかということだ。

 「地球規模で物事を考え、その中で異文化を受け入れ、コミュニケーション能力を駆使しながら、チャレンジ精神を実際の行動に変えていくプロセスには、〝異文化を理解する力〟や〝異文化の人々とのコミュニケーション力〟といった、グローバル人材に求められる資質が含まれます。そして、国境という枠を突き破って活躍するということは、自分の殻を打ち破るということ。グローバル教育は、個々の生徒が自分の可能性にチャレンジするための教育と同義であると思うのです」と清水校長は熱く語る。

 では、生徒がコミュニケーション能力や課題解決能力を発揮して対峙すべきグローバルな課題とはどのようなものなのか。その答えとなるのが、外務省職員や大学教員、ハーバード大学の卒業生など、社会の第一線で活躍中の外部講師を迎えて講演を行う「飯盛セミナー」だ。テーマは、原子力やロボット技術、バイオテクノロジー、建築などの理工学系のものから、心理学、法学、国際協力といった人文・社会科学系のものまでさまざま。生徒たちは、時代の最先端を行く技術や理論に触れることになるのだが、講師の言葉で目立つのは、「英語力だけではなく、〝中身〟があってこそ」「英語を使って何をするかが重要」といったこと。これを聞いた生徒が、個々が目指す専門分野の知識を〝中身〟として習得しようと努めながら、汎用性の高いスキルとして高度な英語力習得に努めていく、両輪での学習姿勢が身についているという。

グローバル人材育成に向けたさまざまな取り組み

2011年 グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)〈大阪府〉に選ばれる

2012年 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)〈文部科学省〉に選ばれる

2014年 スーパーグローバルハイスクール(SGH)アソシエイト〈文部科学省〉に選ばれる

国内外の多彩な異文化体験プログラム

国 外

台湾修学旅行

オーストラリア研修

ドイツ先進的
エネルギー研修

ベトナム医療
ボランティアツアー

国 内 (学内外)

飯盛セミナー

国際交流キャンプ

TOEFL講座

英語スピーチ大会
ほか

ふんだんにアクティビティを取り入れた英語教育を推進

45,000冊もの蔵書を誇る図書館の年間貸し出し数は約12,000冊。図書館司書と教員が連携して、授業内容に関連する書籍を揃え、生徒の学業をバックアップする。新刊ほか注目の書籍には、丁寧に書評が用意され、まるで書店のよう。知的好奇心をくすぐる工夫がなされている。

 大阪府では15年度から、英語圏への大学に進学できるレベルにまで英語力を向上させることを目的に、スーパーイングリッシュティーチャー(SET)制度をスタートさせ、府で10名が採用され、10校に配置された。その1校が四條畷高校であり、SETがグローバル人材育成の一端を担っている。

 同校のSETは、国内の大学を卒業後、アメリカの大学で多彩な英語教育方法を学び、帰国後は企業に勤務していた経歴を持つ樫本英之先生。主にTOEFL受験に向けた下地づくりを担当する。リーディングやリスニング、ライティングのほか、重視するのは身近なテーマでのグループワークやプレゼンテーションだ。

 「学校内の問題点について、校長先生に手紙を書こう」というテーマでは、改善すべき点を見つけ、相手を納得させる表現で、仲間と協力しながらアウトプットする能力の向上を目指す。また別のテーマでは、比較的知名度の低い外国について調べ、観光客を呼び込むためのプレゼンテーションを行う。調べたことをまとめて発表するようなグループワークは他校でも実施されているが、手紙というスタイルや、観光業における集客戦略としてアウトプットさせる点に、樫本先生ならではの工夫がある。とりわけ集客戦略を考えるグループワークは、社会人基礎力を養う大学レベルの取り組みと言っても過言ではない。最初は戸惑う生徒もいるが、かつてない授業スタイルに次第に目を輝かせていくという。英語に苦手意識を抱く生徒であっても、活発な発話を促すアクティビティによって、心理的なハードルは着実に下がってくるそうだ。

 また同校では、SETのほかにもNET(ネイティブイングリッシュティーチャー)や、ALT(外国語指導助手)を配置しており、これらの教員同士が英語で会話することで、「英語は役に立つもの」という認識が生徒の意識として根付いていっているという。大学受験に必要であるのも確かだが、ゲームやクイズ、寸劇などのアクティビティを取り入れて英語への興味を高め、楽しみながら英語を学ぶ環境を整えている。

 そして、国際交流推進プロジェクトチームを統括するのが、新井直子先生。「異文化理解」などの授業を担当し、自由英作文のほか、プレゼンテーションやスピーチ、ディベートなどを取り入れているという。生徒に繰り返し伝えているのは、スピーキングで間違いを恐れない大切さだ。「生徒には抵抗なく元気に英語を話すようになってほしいと思います。そうすれば相手も聞こうとするし、理解しようとしてくれるからです。その分、ライティングではしっかりと文法を守れるようにしてほしいですね」と新井先生は話す。

『ABLish』の活用でタイムリーな英語に触れる

 さまざまな国際交流プログラムや、革新的で多彩な英語教育を進める四條畷高校。その多彩さの一例が、チエルの英語ニュース教材配信サービス『ABLish』の活用と言えるかもしれない。政治・経済・スポーツ・芸能など21のカテゴリーのいずれかに週3回トピックを配信。ひとつのトピックに、難易度を変えた2本の英文があり、それぞれ約1分間の音声がつくサービスだ。教員が補足資料として参考になるWebサイトのURLを貼り付けることもできる。同校では、全学年を対象に、主に夏季休暇中や学期中の自宅学習用課題として、述べ500名の生徒が受講した。

 「最新トピックが随時配信されるので、生徒の関心にもマッチしやすかったですね。現在は、通年での自宅学習用ツールとしてのさらなる活用や、『ABLish』に配信される英訳されたニュース記事を、ディスカッションやディベートの題材として2次利用するプランも検討しています」と、今後の展望を語ったのは新井先生。また、「生徒にとっての使いやすさのほか、教員にとっても複雑な操作がなく、ストレスを感じることなく扱うことができました。今後はより一層有効活用していきたいですね」と樫本先生は評価した。そして生徒の評価も右記のように上々だ。

『ABLish』使ってみました!

北川 涼風さん (2016年3月卒業)

リスニング力を高めたくて音声を何度も聞きました。トピックを選べて、スマートフォンにも対応していたので、肩ひじ張らず気軽に取り組めました。

鶴岡 祐介さん (2年)

1文が短くて読みやすく、リスニング力もリーディング力もアップした実感があります。クイズなどはプリントアウトして専用ノートも作成しました。

鶴岡 里菜さん (2年)

テレビや新聞で見たり聞いたりしたニュースが、数日後には教材になっているスピード感に驚きました。目と耳で学べる使いやすさがありました。

将来につながる体験をさせたい

 「英語力にフォーカスすれば、校内の英語スピーチ大会のクオリティは年々高まりを見せています。そして、生徒の意識という点では、在学中に留学する生徒や、卒業後に国内ではなく海外の大学に入学する生徒も増えてきており、グローバルリーダーを目指す強い意志を感じます」と清水校長。同校では、大学進学のその先にある将来を見据え、「キャリアホームルーム(進路ホームルーム)」という時間も設けられており、そこでは「働く意味」を考えさせる。生徒には、志望大学への入学を直近の目標としながらも、大学を通過点としてステップアップしていくために、高校での3年間の中で将来につながる気づき・発見をしてほしいのだという。

 「ほとんどの生徒が、異文化環境に行けば考えが変わります。学校は、知識を与えるだけではなく、人生の転機となるきっかけを作る場所とも言えます。そこで本校が目指すのは、SGHの本指定を取り、SSHとの両輪で生徒に多様な経験をさせることです。高校生は、勉強でも部活動でも、やればやるだけ内面が充実していきます。基本は授業。各教科の基本を身につけて、習得した知識を実践する場を提示していきたいのです。そして文武両道。部活動で協調性・チームワークを学ぶことで、トータルで人間力を高めてほしいと願っています」と締めくくった。

四條畷高校の実践は、
新たな英語教育のモデルとなる素晴らしい取り組みです!

帯野 久美子先生
株式会社インターアクト・ジャパン代表取締役
中央教育審議会委員
大阪市教育委員
大阪府立四條畷高等学校協議会委員

 現在、中央教育審議会各部会において、次の学習指導要領についての議論が行われています。グローバル化に対応した新しい英語教育の在り方についても議論が進んでおり、例えば、高等学校では「社会的な問題や時事問題について、発表・議論できるコミュニケーション能力を養う」ことが目標とされ、「発信する能力」の強化が検討されています。

 四條畷高校のグローバルリーダー育成に向けたさまざまな取り組みや『英語ニュース教材配信サービスABLish』を活用した討論等による英語授業実践は、まさに新しい英語教育のモデルとなる素晴らしい取り組みです。グローバルで活躍するには、英語の4技能のみならず、自己を認識する「アイデンティティ力」、他者を理解する「ダイバーシティ力」の育成が重要です。

 四條畷高校で学んだ生徒たちが、このような力をしっかりと身につけ、世界で大活躍することを期待しています。

校長
清水 隆先生

英語担当(SET)
樫本 英之先生

英語・国際交流担当
新井 直子先生

この記事で使われている製品

この記事に関連する記事