「生徒にゆだねる」ICT活用

ICTをツールの1つとして使いこなすために

―東京都―
東京学芸大学附属小金井中学校

学習者用端末の普及が進む一方で、授業中のPC使用のルールを児童・生徒にどのように指導するかは課題の1つといえるだろう。中学校の理科の授業で「PCをいつでも自由に使う」先生と生徒たちを取材した。

「生徒にゆだねる」ICT活用
東京学芸大学附属小金井中学校

東京学芸大学附属小金井中学校
〒184-8501 東京都小金井市貫井北町4丁目1−1

「健康な身体とすぐれた知性と豊かな情操とを持ち、平和で民主的な社会の発展に貢献できる、自主的で創造性に富む国民を育成する」を教育目標とする。

ICTに対する感覚の変化

この日は静電気の実験が行われていた
この日は静電気の実験が行われていた

 大西琢也先生が担当する理科の授業でICTの活用に取り組み始めてから約8ヶ月。日々の授業の中で、先生にとっても生徒たちにとってもICTに対する感覚は徐々に変わってきたという。初めのうちは生徒たちにとって「授業でPCを使う」ことの物珍しさが先に立っていたが、PCの使用が当たり前になってきた段階で、大西先生は使い方のルールを見直すようになった。

 「授業中に生徒が『今、パソコン使っていいですか』といちいち聞いてくることに違和感を覚えました」と大西先生。ICT機器を使わずに授業を行っていたときには、グループの話し合いでホワイトボードなどのツールを生徒が自由に選んで使っていたのだが、ICT機器となるとなんとなく「先生に許可を得てから使う物」という感覚になってしまう。そのことが生徒たちの思考を妨げているのではないかと考え、「ここにある物はいつでも自由に使っていい」と宣言することにした。

 「最初は、『私が話をしている間はPCを閉じなさい』と指示していたのですが、授業を重ねるうちに、その指示にあまりメリットがないと思うようになりました。PCを閉じれば必ず授業に集中できるわけではないですし、むしろ私の話を聞きながらPCに何か打ちこんでいるとすれば、それは何かしらのインプット・アウトプットであるので、それも授業への参加の方法の1つだと考えるようになりました」

 今では授業中にチャットなどのツールを使うことも許可している。大胆な判断にも思えるが、InterCLASS Cloudの画面モニタリング機能を活用することによって、授業とは関係のない操作は防げるという。生徒一人ひとりのリアルタイムの画面がサムネイル表示されるモニタリング機能を大型スクリーンに映し出し、教室全体に共有しているのだ。つまり、個々のPCを自由に操作はできるものの、自分の画面は先生やクラスメイトに常に共有されていることになる。「これなら授業に関係のない操作はしないですし、調べ学習やグループ活動の際にこれを見て友達の作業を参考にすることもできます」

ツールの選択肢の1つとして

 PCを自由に使うことを許可したことで、そもそも使い方を知らない生徒も多いことが浮き彫りになった。「目の前にPCがあるのに『電卓を貸してください』と言ってきたり、知らない言葉が出てきても検索しようとしなかったり。指導を工夫する必要があると感じました」

 新出の用語を説明する際、従来であれば用語の意味を黒板に書いてノートに写させていたところを「用語をPCで検索する」活動に置き換えたり、表計算や電卓のツールを学習内容に応じて実際に使いながら指導したりと、PCの基本的な使い方に触れる機会をつくるようにした。

 「使いたければ使う、必要がなければ使わない。それが理想ですが、『使い方を知らないために使えない』という状況は避けたいので、授業中の活動に少しずつその要素を取り入れ、経験させるようにしています」。今では、実験をしながら必要に応じて自主的に検索する場面も増え、実験結果をまとめる際に紙に書くかPCを使うかを生徒自身が選択するような状況も生まれてきた。手書きだと書くことが苦手だった生徒がPCを使うことでたくさん書くようになるケースも見られ、大西先生はツールの選択肢が増えることのメリットを実感している。

これまでの習慣にとらわれない授業を

 大西先生は今後、毎回の授業で使うワークシートをPC上で入力できるようにし、もっと自由度の高いものにしていきたいとも考えている。紙のワークシートではどうしても枠の大きさや形式が固定され、記入する内容もなんとなく制約されてしまうからだ。「こちらから指示したわけではないのに、大きい枠があると自然とイラストを描くし、小さい枠には文字を書くのですよね。PC上であれば紙とは違って枠を固定する必要もないし、もっと自由な発想で書けるワークシートが実現できるはずなのですが、自由度が高いと逆に何をしていいか迷ってしまう生徒もいるので、模索しているところです」これまで習慣としてきた学び方とのギャップに、生徒たちが戸惑う場面もあるようだ。

PCを開いている生徒も閉じている生徒もいる
PCを開いている生徒も閉じている生徒もいる

 最後に、大西先生が目指す理想の授業について伺った。「PCを自由に使っていいと言いましたが、それもわざわざ言う必要がないと思っています。鉛筆を自由に使っていいよ、とは言わないですよね。私たちが普段からスマートフォンで検索することが当たり前になっているように、目の前の物を有効活用するのはごく自然なことです。学校だからこう、という従来の学び方だけではなく、いろいろなツールを柔軟に取り入れて学ぶことで、生徒たちが社会に出たときにも通用するスキルが身につくのではないかと考えています」

 学校での学びの在り方は、これまでの習慣に捉われることなく柔軟に変わるべき時を迎えているようだ。

教諭
大西 琢也 先生

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