ICT活用指導力、どう育てる? ~教員養成課程における取り組み~

―沖縄県―
沖縄女子短期大学

2020年度より小学校から順次全面実施される新学習指導要領には「ICTを活用した学習活動の充実」について明記されており、すべての教員に一定のICT活用能力が求められている。教員養成の段階からICTを活用した指導力の育成が急務となる中、大学等の教員養成課程で学ぶ学生たちにはどのような学びが求められるのだろうか。

沖縄女子短期大学

沖縄女子短期大学
〒901-1304
沖縄県島尻郡与那原町東浜1番地

1966(昭和41)年開学。総合ビジネス学科・児童教育学科を有す。産学連携推進室を設置するなど、産業界や他大学との共同研究・連携事業も積極的に行っている。

ICT活用促進の取り組み

 沖縄女子短期大学では2017年度よりICT機器を積極的に導入し、特に小学校教諭の養成課程において授業実践や教材開発等に活用してきた。また、自治体と連携し現職教員を対象とした研修を行ったり、地域の児童・生徒を対象とした公開講座としてプログラミング体験イベントを実施したりするなど、教育現場でのICT活用の促進に幅広く取り組んでいる。

 今回はその中でも、初等教育コースの学生たちがICTを活用した模擬授業に挑戦する様子を取材した。

授業支援システムを活用して模擬授業にチャレンジ

 新垣さき先生の担当するゼミナールは「教材製作」をテーマとしており、普段は初等教育コースの学生と心理教育・福祉教育コースの学生が共に学んでいる。取材に伺った7月下旬には心理教育・福祉教育コースの学生たちは一足先に各施設での実習が始まっており、大学に残った初等教育コースの学生で、小学校での教育実習に向けて準備を進めていた。

 「せっかくだからこの期間を使って電子黒板を触ってみようかと提案したら、ぜひやりたいということになり、学生たちにICTを活用した『模擬授業』をしてもらうことになりました」(新垣先生)

 近年、教育実習先の学校でもICT機器の整備が進んでおり、実習生がそれらを活用して授業を行うことが求められるケースも増えている。一方で、学生たちが教育実習の前にICT機器を操作する経験が十分できているかというと、そうとはいえないのが実情だ。

 2か月後に小学校での教育実習を控えた初等教育コースの学生たち。教育実習で自分が担当する予定の学年の学習内容から単元を選んで指導案を作成し、その中でICTの活用が有効となる場面を自分なりに考察して、その場面だけを取り出してそれぞれ10分間の模擬授業を行うことになった。

 今回の模擬授業に挑戦した学生たちは、電子黒板や授業支援システムに実際に触るのは初めてだという。

比較提示や画面配信、タイマーを活用

児童役の学生はタブレットPCに自分の考えを記入する
児童役の学生はタブレットPCに自分の考えを記入する

 二人ひと組が先生役となって残りの学生が児童役として参加し、10分間ずつ交代する形で模擬授業が実施された。先生役はホワイトボードへの板書とチエルの授業支援システム『らくらく授業支援』を併用し、児童役は一人1台のタブレットPCを使用する。機器を使うのは初めてということもあって、新垣先生と常駐スタッフがたびたび操作のサポートに入る。

 ほとんどの先生役が活用していたのが「比較提示」の機能だ。児童役から複数パターンの考え方が出ることが予想される場面で考え方をタブレットPCに記入させ、電子黒板に並べて提示する。児童役がどのような答えを記入するかはその時にならないとわからないこともあり、どれをピックアップして並べるかというその場の判断も必要となる。

 算数の文章題で立てた式を比較提示したあとで、さらにブロックを使って考えさせるために画像を貼りつけたワークシートの画面を配信した先生役もいた。児童役は、配信されたブロックの画像にタブレットPC上で各自の考え方を記入する。先生役はそれらを再度比較提示し、最終的に板書で考え方をまとめた。「考えさせる場面で先に答えを言ってしまうなど、ミスもありましたが、電子黒板とホワイトボードを用途に応じて使い分けていた点は良かったと思います」(新垣先生)

 その他にもタイマー機能を使って時間を区切るなど、複数の機能を組み合わせて活用し、授業を進めていた。

教材研究が課題

 模擬授業のあとの振り返りでは、新垣先生から学生たちに向けて「発問が曖昧な場面があった」「漢字を書かせる場面では、白紙の画面でなく方眼のワークシートを配布するべきだった」「誤った式を記入している学習者がいたのをそのままにしてしまっていた」など、教材研究の不足が指摘された。

 新垣先生は今回の活動について次のように話す。「授業をした経験のない学生たちが、授業の展開と機器の操作という慣れない2つのことを同時にするのですから、かなり難しい課題だったと思います。事前に指導案に沿って授業の流れを細かく想定していた学生も、いざ模擬授業となって前に立つと、気持ちに余裕がなくなり、想定していた通りには進められないように見受けられました。また、基本的なことですが、教材研究をもっと深める必要があるとも感じました。ICTを授業で効果的に活用する力はこれからの教育現場では絶対に必要なものです。教材研究を深めることと、ICTを活用する力の育成は並行してやっていかなければいけないと考えています。今回は初めてICTを活用した模擬授業にチャレンジした学生もおり、課題を残すことになってしまいましたが、各教科の教育法等の科目で模擬授業を行う際にもICTを活用することができれば、教材研究と密接な、より効果的なICTの活用について考える機会が得られるのではないかと思います」 

学生たちの意識は高まっている

 インターネットやスマートフォンなどに日常的に触れてはいても、教育現場のICT化、電子黒板やタブレットPCで学習するアプリなどを紹介すると、初めは驚く学生が多いという。しかし、教育実習で実際にICTを活用した授業をした先輩学生の話を聞くなどして、実習前にICT機器に触っておきたいという学生が増えてきている。「以前は、触ってみる?と聞いてもあまり反応がなかったのですが、ここ数年で必要性を感じる学生が増えていて、空き時間を利用して触ってみたいと希望する学生も出ています。教育実習から戻ってきた学生のほとんどが授業で何らかのICT機器を使ったと言っていて、実習前に触ったことのなかった学生はとても苦労するようです。まずは少しでも触れる機会を増やせればと思います」(新垣先生)

自分以外の先生役がどんなふうに授業を展開するのか興味津々
自分以外の先生役がどんなふうに授業を展開するのか興味津々

 ICTを授業で効果的に活用するためには、機器の操作に慣れ、それに気をとられることなく授業を展開する必要がある。教員養成課程段階でもICTに触れる機会を増やすことが求められる。

産学連携推進室
産学連携コーディネーター
比嘉 勇太 氏

児童教育学科
講師
新垣 さき 先生

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