まだ間に合うICT環境整備! 既存カリキュラムを上手に利用

教育委員会を訪ねて

―宮崎県都城市教育委員会―

都城市教育委員会では、本年度よりICT環境の整備に関する3ヵ年計画がスタートした。
2020年度から始まる新学習指導要領の本格実施に向けて、いかにICT環境の整備と導入を進めるか、また、子供たちに今後必要とされる「情報活用能力」にはどのようなものがあるのか、都城市教育委員会教育長の児玉晴男氏にお話を伺った。

都城市教育委員会

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2大教育ビジョンを柱に

都城市教育委員会 教育長 児玉 晴男 氏
都城市教育委員会 教育長
児玉 晴男 氏

 「すぐれた知性をもち、心豊かでたくましい、ふるさと都城を愛する人間力あふれた児童生徒の育成」をスローガンに掲げ、「小中一貫教育」と「社会に開かれた学校」という2大ビジョンを柱に教育を進めているのは、宮崎県の都城市だ。

 6年前に市内全校がコミュニティ・スクールに加盟。学校運営協議会が全校に設けられており、地域と学校とが共に歩む基盤づくりに力を入れている。

待ったなしのICT環境整備計画

 2020年度から本格実施される新学習指導要領に対応するためには、来年度中に全ての小学校で、
再来年度中には全ての中学校でICT環境が整備される必要がある。しかし都城市は、昨年度の時点で小・中学校の普通教室でのインターネット環境整備は進んでおらず、情報教育においては後進地域であった。

 昨年度まで同教育委員会学校教育課課長を務めた児玉氏は、ICT環境整備の実現に向け、市長部局との話し合いを続けてきたという。その結果、都城市では本年度から3年間をかけて、市内の小・中学校全校にICTを導入するという計画策定に至った。

 計画では、まず学習用のICT環境を整えた上で、次に校務支援の環境整備を進める方針だ。

教員は一人1台を目指し、子供たちには4人に1台のタブレットPCを

 今後3年間で都城市が目指すICT環境の整備・導入目標数は、WiFi環境と大型テレビ、書画カメラは普通教室および理科室数とし、タブレットPCは、小学校では学級担任、中学校では教科担任(国、数、英、理、社)に1台ずつ、子供たち(4年生以上)は4人に1台だという。
1年目となる本年度は、大型テレビと書画カメラを導入予定だ。また、小学校4校、中学校4校をモデル校として、WiFi環境とタブレットPCを整備し、2年目に小学校全校、3年目には中学校全校を対象とする。

ICT活用への期待

都城市教育委員会 教育長 児玉 晴男 氏

 児玉教育長が、今後大いに期待しているのは、英語教育におけるICTの活用だ。

 今の小学校の教員の大半は、大学卒業の時点では将来的に英語を教えることが想定されておらず、発音に自信のある教員は少ない。そのため、都城市ではALTを10数名に増員し、ネイティブの発音を聞く機会を増やしている。並行して大型テレビを通したデジタルコンテンツを導入すれば、英語の授業の充実を図れるのではないかと児玉教育長は考えている。

 「今後は、英語で『聞く』『読む』『話す』『書く』が大前提となる、時代の転換期を迎えます。デジタルコンテンツからの音声と生身の音声、それぞれの特性を活かした活用方法を検討した上で、ICTとALTをバランス良く、英語の授業に組み込んでいきたいですね」と児玉教育長は語った。

 もう1点、児玉教育長が期待を寄せるのが、特別支援が必要な子供たちに対するICTの活用だ。授業中に立ち歩くなどの特性のある子供たちには、既存の教科書やドリル教材のような紙の媒体だけでは集中力を持続させることが難しいため、ICTを活用したデジタル学習教材への期待は大きい。また、視力が弱い子供たちにとっても、ICT機器による拡大機能は、非常に効果的と考えられる。

カリキュラム・マネジメントに組み込んで効果的な活用を

ICT環境の導入と活用にあたっては、児童生徒の「情報活用能力」を、いかに育てていくかということが最重要課題だ。

 「情報活用能力」とは、自ら収集した様々な情報を取捨選択しながら組み合わせて理論立てしたり、そこから導き出された結論に対して実際に自分たちで行動したり、といったものだ。

 「子供たちの情報活用能力を育むためには、子供たちがどの授業時間に、どのような学習活動においてICTを活用するのが最も効果的か、それぞれの学校が特色を出しながら、しっかりとカリキュラム・マネジメントすることが大切」と児玉教育長は言う。

 「ただし、小・中学校のどの年代でどんな情報活用能力の育成を図るべきかは検討を重ねる必要があり、子供たちの将来を見据えた計画を教育委員会が示す必要があります」と続けた。

既存のカリキュラムを上手に利用する

 カリキュラム・マネジメントは重要であるが、だからといって何か特別なカリキュラムを組む必要はない。

 学校の特色を出したカリキュラムの一例として「学校田での米作り」を挙げてみよう。これは、地域の方々と共に米作りを行い、収穫後に協力していただいた方々へのお礼としてお米をお届けするというプログラムだ。

 例えばそれを、収穫のプロセスや地域の情報を活用・加工した新聞や手紙を作成し、お礼のお米とともにお渡しすることで、子供たちの情報活用能力は育まれ、さらに「地域への発信力」を身につけることができる。

 このように現行のカリキュラムを工夫して出来る取組みは数多くあると児玉教育長は考えている。

 ただし、ICTの活用方法については、あくまでも学校が主体となって、教員同士で活用のスキルや活用する授業内容を高め合うことが望ましい。それに対し、必要に応じて巡回や訪問支援を行ったり、明確な指示を与えたりしながら、各学校の動きを見届けるのが教育委員会の役割だという。

新時代に適応できる子供たちを育てたい

 都城市のICT活用における最終目標は、「子供たちの『情報活用能力』を向上させること」だという。

 これからを生きる子供たちの多くは、学校を卒業し社会に出るとすぐに、プレゼンテーションなどを行って仕事をすることが求められる。その時になくてはならないのが「情報活用能力」だ。

 さらにコンピュータ技術の飛躍的な進歩によって、AI(人工知能)の普及が広がり、これからの社会のあり方に様々な影響が出ると予想される。

 児玉教育長は、「AIは、任された目標に到達することがゴールであり、一方で、自ら目標をつくることができるのが人間である」とした上で、「子供たちには、AIにできること、人間にできることの違いが感覚でわかるようになってほしい。それが、自分の将来を見極めるときに非常に大切になってくる」と語った。

 今後はICTを活用しながら、「自分で自分の道を切り拓いていける子供たち、新しい時代に適応できる子供たちを育てていきたい」と、児玉教育長は最後に思いを述べた。

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