プログラミング教室でアイデアを形にする喜びに触れる

ビスケットでまなぶ夏休みプログラミング教室

―神奈川県―
川崎市立古川小学校

ビジュアル・プログラミング言語『Viscuit(ビスケット)』を使用した活動が、総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」に選定されたことを受け、全国11か所の小学校等で『Viscuit』の実証講座が開かれることとなった。そのうちのひとつ、川崎市立古川小学校で4・5・6学年生を対象に開催された「ビスケットでまなぶ夏休みプログラミング教室」を拝見した。

元PTA会長を講師に迎えて2日間のプログラミング教室

校友会・元PTA会長 Viscuit講師
鉄橋 英明先生

  「それでは、これからプログラミング教室を始めます」

 開催日は8月21日、22日の2日間。夏休み終盤の日程にもかかわらず、用意されていた40席はほぼ埋まった。「よろしくお願いします!」と、古川小のパソコン室に子供たちの元気な声が響き渡る。

 講師は昨年までPTA会長を務めていた鉄橋英明先生だ。現在はPTAのOBの一員として学校に関わっている。昨夏、勤務先のSNSで『Viscuit』を知って関心を持ち、『Viscuit』のファシリテータ講習を受講して、今年1月には講師としての初舞台を踏んだ。

 両日ともに『Viscuit』の開発者、合同会社デジタルポケット代表の原田康徳博士も会場入りし、同社のチーフファシリテータらとともに万全のサポート体制でスタートした。

「めがね」を使って、部品を動かす基礎の基礎から

 1日目は2時間、2日目は3時間というプログラムで、1日目の1時間目は『Viscuit』の基本から学ぶ。まずはブラウザの検索窓に「viscuit」と入力し、『Viscuit』のWebサイトを表示させるところから。今回参加している子供たちはパソコンやタブレットなどのツールやゲームに興味がある子が多く、すんなりと『Viscuit』の画面までたどり着く。

 鉄橋先生は子供たちを教室の前に集めて、今から何をするのかを簡潔に伝える。

 「左のスペースに△を3つ置いたらまた集まってください」

 すぐさま自分のパソコンの前に戻り、画面上の部品置き場にある△をドラッグ&ドロップでステージに3つ並べ、再び前に集まる子供たち。学ぶ態度は前のめりだ。迷いがなく、早い。

魚が後ろ向きに進むように「めがね」の中に配置して、子供たちの反応を見る。

 「次に、この丸が2つつながっているものを右のスペースに出します。これ、何に見える?」

 子供たちから一斉に「めがね!」と声が上がる。

 「それでは、これは『めがね』と呼ぶことにしよう。この『めがね』を出したらまた前に集まってください。はい!」

 われ先にと席へ戻る子供たち。序盤はこうして1つずつ丁寧に作業を進めていった。「めがね」に部品を入れるとどうなるのか、子供たちがその機能に気づいたところで次のステージだ。

全員の作品を表示させた画面の前に集まり、食い入るように見つめる子供たち。自分の作品を必死に探しては、「あった!」と目を輝かせる。
隣の席の子供と相談しながら、チンアナゴのリアルな動きを追求する子供も。

「めがね」をどう使えば意図するように動く?

子供たちの様子を見守り、
適宜手を差しのべる原田博士。
休み時間には博士のまわりを子供たちが囲んだ。

 「今度は魚を動かそう」と鉄橋先生が言うと、勘のいい子供が「また『めがね』を使うの?」と声を上げる。先へ先へと進みたくて仕方がない様子だ。

 鉄橋先生はわざと、魚が後ろ向きに進むように「めがね」の中に配置する。途端に子供たちが「おかしいよ!」「違う! 逆!」と敏感に反応する。「魚は前に進まないとおかしいよね」と確認し、「めがね」の中の魚の位置を修正する鉄橋先生。

 「プログラムは指示した通りにしか動かない」ということを学び、どうすれば自分の意図した通りに動くのかを考えるようになっていく子供たち。「めがね」を複数使うとどうなるのかなどの実践を交えつつ、「カニらしい動き」「オバケっぽい動き」を考え、画面上に展開させながら、加速度的に『Viscuit』の使い方を把握していく。

みんな違うこだわりのポイント

 1時間目の後半は、自分たちで作った部品を動かして、「みんなの海」を作る段階へと移る。鉄橋先生は、「ペン」ボタンをクリックし、お絵描き画面を呼び出して実際に魚を描いてみせる。マウスで描くのは難易度が高く、鉄橋先生が描いた魚にも笑いが起こるが、うまく描こうとしなくても良い、という安心感が子供たちを支える。

 子供たちはマウスを巧みに動かして、次々と海の生物を生み出す。生物の動きに凝る子もいれば、絵を描くことに没頭する子、部品置き場を多様な生物で埋めていく子など、こだわりのポイントはそれぞれに異なる。

 「まず1つ作品を完成させたら、『送る』ボタンを押してみよう」と鉄橋先生が促す。子供たちの作品が次々とサーバに送られ、共有画面に表示されていく。

 ある程度の作品が集まったところで、鉄橋先生は子供たちを前に集めて「みんなの海」を表示させた。すると「いた!」「俺のこれ!」「私のあった!」とあちこちから歓声が上がる。さまざまな作品が画面を埋めつくす。おもしろい動きや予想外の生物に、子供たちは自然と笑顔になる。

 1時間目の最後は「草原」「空」「オバケ屋敷」「宇宙」と4つのステージそれぞれで作品を作り、共有した。4つのステージを制覇しようと急ぐ子供もいれば、1つのステージでじっくり作り上げる子供もいる。鉄橋先生は「4つのステージ全部で作品を作ることができるといいね」と声掛けしながらも、時間をかけて作品をつくる子供を急かさずに見守っている。

あふれ出すアイデア時間を忘れて集中する子供たち

接触によって風邪ひきが増えていくというシミュレーション。

 2時間目は、元気な棒人間と風邪をひいている棒人間を描き、接触によって風邪ひきが増えていくというシミュレーションだ。「めがね」に複数の棒人間を入れて、感染を拡大させていく。

「うわ! どんどんうつる!」

「みんな感染しちゃったよ!」

 元気な棒人間の動く速さや方向など、微妙な設定で感染速度が異なる。たった1人の風邪ひきから、瞬く間に全員へと感染が広がってしまった子は、そのスピードに驚きながら、少しでも感染速度を遅くしようと、たくさん並べた「めがね」の中を微調整していた。

 最後に、鉄橋先生は簡単にシミュレーションについての説明をしてまとめ、この日は終了となった。しかし、感染した棒人間の風邪を治すための解決策を考えた子供がパソコン室に残り、病院を建てたり看護師を配置したりするなど、独自に工夫をし、たくさんの「めがね」を追加していた。

どうしたらリアルに動く?
変えるところと変えないところ

 2日目はより高度なプログラミングが展開された。1時間目は、棒人間を踊らせたり、尺取り虫を動かしたりする。アニメーションを作るには、すべてを変えるのではなく、変えるところと変えないところを考える必要があることを学んでいく。動かすために動かない場所を考えるという発想に、子供たちも驚いたようだ。

 そして2時間目は、規則的な模様を描いていく授業だ。パーツは2つ。「めがね」も2つ。たったそれだけのシンプルなプログラムで美しい模様を描き出していく。コツは「ゆっくり動かすこと」だと鉄橋先生は説明する。共有画面で例示すると、子供たちは「わぁ、キレイ!」「すごい!」と感嘆し、目に見えてモチベーションも高まった。

 3時間目のゲームづくりでは最初に卵を描き、クリックすると卵が割れて何かが生まれるという仕組みを作った。生まれた何かが次のアクションを起こすことでストーリーが生み出されていく。「クリックすると○○になる」という新しい要素が入ったことでゲーム性が高まり、子供たちも『Viscuit』に夢中だった。

複雑なことほどおもしろい

 みんなのゲームをお互いに遊び合い、それぞれの工夫を感じ取ったところで、鉄橋先生は全員を教室の前に集めた。そして、身のまわりにあるコンピュータは、たくさんの「めがね」で動いていることについて説明し、今回の全プログラムを終了した。

 終了後、参加した子供たちに2日間の感想を尋ねると「最初は簡単なことしかしないのかなと思ったけど、だんだん工夫できるようになっていって楽しくなった」「複雑な動きを考えるのがおもしろい」「家でもやってみようと思った」などの声が聞かれた。

 プログラミングに親しみ、楽しみ、アイデアを形にする喜びに触れた2日間。子供たちの創造力は大いに刺激されたようだ。

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