楽しいと学習意欲が増し、主体的な学びの姿勢に...

英語教育最前線レポート

英語を使って、自ら進んでコミュニケーション活動を行う児童を育てる

―群馬県―
前橋市立城南小学校

2014年度から、前橋市内の小・中学校とともに、文部科学省の「英語教育強化地域拠点事業」の指定を受けている前橋市立城南小学校。次期学習指導要領を見据えて取り入れたモジュール学習をはじめ、その工夫の数々を紹介する。

英語特配教員
小畑 悦子先生

研修主任 5年2組担任
池田 美代子先生

6年2組担任
中島 久美子先生

15分間のモジュール学習と45分間の授業の2本立てで学ぶ

 『英語を使って、自ら進んでコミュニケーション活動を行う児童を育てる』を研究主題に掲げている前橋市立城南小学校。この目標を達成するために、同校ではさまざまな工夫を凝らしている。なかでも、「15分間のモジュール学習」と「45分間の授業」を組み合わせた授業構成が、その中心的な取り組みだ。

 「モジュール学習」は、新しい学習指導要領でも導入が推奨されている。他教科の授業時数を削るのは難しいため、1回15分間のモジュール学習を3回行うことで、45分間の授業1回分とするのだ。同校ではそれを見据えて、2016年度からモジュール学習を導入した。低学年・中学年では、週1回のモジュール学習と週1時間の外国語活動、高学年では週3回のモジュール学習と週1時間の英語科の授業を組み合わせて行っている。

 笠原晶子教頭は「高学年ではモジュール学習を月・火・木、英語科の授業を水曜日に行います。ほぼ毎日英語に触れることで、子供たちが英語に慣れ親しみ、進んでコミュニケーションを取ろうとする態度を育むことができると考えました」と語る。

 研修主任の池田美代子先生や英語特配教員の小畑悦子先生も、毎日のように英語を学ぶ効果は大きいと口をそろえる。

 「毎日英語に触れることで、子供も教師も慣れ親しみ、英語を楽しむようになりました」と池田先生が話すと、小畑先生も、「45分間の授業で学んだ単語や表現を、15分間のモジュール学習で復習するので、定着しやすくなりました」と言葉を添えた。

モジュール学習の内容をパターン化して学びの質を保証

「受け止め言葉・相づち言葉」カードを使い、45分間の授業で練習。良いリアクションが、良いコミュニケーションをつくる。

 外国語活動や英語科の授業は、英語特配教員とALTによるティームティーチングで進めるが、モジュール学習は担任1名で行う。そこで、教員によって学習内容に差が出ることのないよう、モジュール学習の内容を共通パターンとして統一し、どの教員でも同じように指導できる体制を整えた。

 〈表現・単語練習〉〈対話練習〉〈書く練習〉を5分ずつ行うのが、共通パターンだ。パターン通りに進めればよいので、英語が苦手な先生でも安心してモジュール学習を進めることができる。

 パターン化する際に心掛けたのは、まずテンポの良さだった。声に出したり対話したりといった活動をテンポ良く行うことで、子供たちは英語を積極的に楽しんで発話するようになる。小畑先生は「モジュール学習は15分間と短いので、『ゆっくりじっくり学ぶ』より、『繰り返しテンポ良く学ぶ』ことを大切にしました。繰り返しテンポ良くできる学習活動を、パーツとしてモジュール学習に盛り込んでいます」と話す。

 さらに同校では、モジュール学習に「書く活動」も取り入れた。モジュール学習で英単語や英語表現を読んで、聞いて、話しているうちに、子供たちから「書きたい!」という欲求が自然と湧いてきたのだという。

 池田先生は「読む・聞く・話すとセットだから、『書く』ことも苦痛ではなく、楽しんでいます」と喜んでいる。

コミュニケーション力を高める7つの工夫

 授業構成だけではない。ほかにも、『英語を使って、自ら進んでコミュニケーション活動を行う児童を育てる』ための取り組みには、細やかな工夫が凝らされている。

工夫1ICTを活用し、ネイティブの音声を聞かせる

 モジュール学習でも45分間の授業でも、ICTを効果的に活用している。フラッシュ型教材や『Hi, Friends!』のデジタル教材などを使って、子供たちにネイティブの発音を繰り返し聞かせているのだ。笠原晶子教頭は「英語に自信がなくとも、ICTがネイティブの音声を届けてくれるので、先生は安心して授業を進めることができます」と話す。

工夫2先生向けに、「クラスルームイングリッシュ」

 "オールイングリッシュ"にこだわりすぎると、先生も子供も苦しくなり、英語が嫌いになってしまう。そこで "How many sheets?""Please collect from the back.""Make 8 groups."のように、先生が指示する時に使う「クラスルームイングリッシュ」を用意した。小畑先生によれば、簡単な英語表現だが、クラスルームイングリッシュを頻繁に口にすることで、教員自身も英語を使うことに慣れ、英語への苦手意識がなくなる効果もあるそうだ。校内研修でも、すべての先生がこのクラスルームイングリッシュを実践している。

工夫3子供たちには「受け止め言葉・相づち言葉」

 子供たちは「受け止め言葉・相づち言葉」を使う。これは、"Wow!""Nice!""Really?""Pardon?""Wait a minute!" などのように、相手の発言を受け止めたり、相づちを打ったりする時に使う表現だ。最初は、発話する側が言葉に詰まって困らないように、会話をつなぐフレーズをカードにして練習させたのだが、聞く側にも効果があることがわかった。聞く側が黙って聞いているのではなく、"Nice!"などと英語を使って良いリアクションをすると、会話が自然と盛り上がるのだ。「盛り上がると楽しくなり、積極的に話そうという姿勢が身につくのです」と小畑先生は解説した。

工夫4身振り手振りを交えたジェスチャーも練習!

 会話を続け、楽しむには、受け止め言葉・相づち言葉でのリアクションのほかにも、身振り手振りを交えたジェスチャーも必要だ。

 そこで、ジェスチャーも教えて練習することで、単語や表現が出てこなくても、何とかして会話を続けて意志の疎通を図ろうとする姿勢を育んでいる。

1年生に英語で絵本を読み聞かせるために、難しい英単語のジェスチャーを考える。「tallは手を頭の上に高くかざそう」「nauthyは舌を出すジェスチャーがいい」などとみんなで意見を出して、練習していた。

工夫5「単元別評価一覧表」を作成

 カリキュラムや評価でも工夫を凝らしている。学年ごとに「話す」「書く」「聞く」「読む」の4技能でつけたい力を示し、その目的や内容、評価方法まで定めた「CAN-DOリスト」を作成した。たとえば、6年生の「話す」なら、「自分の考えを相手に伝える」を〈目的〉とし、「道案内や職業、一日の生活など」の〈内容〉について、簡単な英語表現を用いて伝えることができる〈能力〉を育み、パフォーマンステスト(後述)や発表で〈評価〉すると明記している。そして、「CAN-DOリスト」に基づき、学びのねらいをより具体的に示したのが「単元別評価一覧表」だ。45分間の授業の単元ごとに、〈目的〉と、身につけさせたい〈能力〉をまとめている。

工夫6振り返りカードで自己評価、パフォーマンステストでも評価

45分の授業の最後に、振り返りカードで自己評価。先生にとっては一人ひとりの成長や課題を把握する手掛かりにもなっている。

 授業の最後には毎回「振り返りカード」を子供に書かせ、単元のねらいを達成できたかを、自己評価させる。「楽しかった」だけで終わらせず、「今日できたこと、できなかったこと」を、客観的に自己評価させることで、子供たちは単元のゴールを意識して取り組むようになったという。先生へのリクエストを書く欄もあり、「whenとwhatの違いを教えてほしい」など、意欲的な要望も寄せられている。また、授業で扱った表現を、子供一人ひとりと個別にやり取りする「パフォーマンステスト」も行っている。これは、単元で習った表現を使って先生と英語で話す様子を見て、「コミュニケーションしようとする力」を評価するものだ。

工夫7階段や廊下の掲示物で日常的に英語に触れさせる

 校内のいたるところには、英語の掲示物が貼り出されている。会話でよく使う単語や表現を、日常のなかで目に触れさせ、習得させるのだ。

「自ら進んで、英語でコミュニケーション」を修学旅行で実践!

 このような工夫を凝らして実践してきた結果、子供たちには「進んでコミュニケーションする」姿勢が養われている。後藤章校長は1枚の写真を見せながら、「これは、6年生が鎌倉へ修学旅行した時に撮った写真です。『修学旅行中に外国人観光客に話し掛けて、いっしょに記念写真を撮らせてほしいとお願いしよう! 最低2人には話し掛けること!』と課題を与えました。さすがに難しいかと思っていたのですが、子供はすごいですね。観光客とおぼしき外国の方々にぐいぐいと話し掛けて、たくさん写真を撮ってきました」と笑みを浮かべる。

 修学旅行の前には"Can I take a picture together?"や"Where are you from?"などの表現を練習したが、実際には"Picture, OK?"などの簡単な英語表現とジェスチャーを駆使しながら、積極的に挑んだという。

 小畑先生は「正しい英語でないと恥ずかしいという感覚は、子供たちにはありません。少しの英語しかわからなくても物怖じせずに、コミュニケーションする力がついているのです」と話した。

階段の踊り場に設けられた英語掲示物コーナー。階段のステップにも、英単語が貼られている。

「楽しい」と学習意欲が増して、主体的、積極的な「学び」になる

 このような数々の工夫に加え、同校では、「英語を楽しませる」ことを心掛けている。池田先生は「楽しいと学習意欲が増し、主体的に学ぶようになります。そして、積極的にコミュニケーションするようになるのです」と微笑み、6年2組担任で教員3年目の中島久美子先生も「子供たちだけでなく先生も英語を楽しんでいる」と話す。そして、「私は英語が苦手で、教える自信などありませんでした。でも毎日のように英語を教え、子供たちといっしょに学んでいると、自分も上達していくのがわかり、英語が楽しくなってきています」と笑顔を見せた。

 子供たちも教員も、まずはいっしょになって「楽しむ」こと。そのうえで、学習活動として授業設計し、カリキュラムマネジメントや評価も行う。それこそが、「進んで英語でコミュニケーション活動を行う」子供たちが育つ秘訣なのだ。

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