授業改善を段階的に実施。日常的なICT活用が定着

第42回全日本教育工学研究協議会 全国大会 研究発表より

―北海道―
札幌市立幌西小学校

「ICT利活用教育による新たな学びの創造へ向けて」をテーマに、2016年10月、佐賀市で「第42回全日本教育工学研究協議会 全国大会 佐賀大会」が2日間にわたり開催された。全国の小・中学校や高等学校、大学による研究発表が行われ、「日本教育工学協会 学校情報化先進校」に認定されている札幌市立幌西小学校の矢野聡史先生は「日常的なICT活用が定着した学校における一人1台のタブレットPCを用いた授業」について、その成果と課題を発表した。

幌西小の情報化と学校改善のあゆみ

札幌市立幌西小学校
矢野 聡史 先生

 札幌市は、203校ある小学校に対して、ICTの環境整備を積極的に行っています。中でも、市の中心部に位置し、児童数975名、学級数29学級と、市内で最も大きく、昨年開校90周年を迎えた伝統校である、幌西小学校の情報化と授業改善のあゆみ(図1)についてお話しいたします。

 本校では、2010年度に電子黒板と教室用PCを、2012年度に校務支援システムを導入しました。さらに、2012年度には、教室のICT環境を再整備し、翌年度に日常授業の改善に取り組みました。学習規律やノート指導を全校で統一し、校務の情報化を図って職員朝会を廃止し、職員会議を年4回に減らしました。そして2014年度からは、タブレットPCを導入し、実証研究を開始し、JAETの学校情報化優良校の認定を受けました。2015年度にはJAET学校情報化先進校にも認定されました。

授業改善も段階的に進めていった

 現在、本校のICT環境は(図2)の通りです。公立学校としてはとても恵まれた環境にありますが、札幌市が行っているICT環境整備をベースに、実物投影機をさらに増やし、デジタル教科書を導入するなど、本校独自にICT環境を整備しています。

 (図3)はすべての学級に置いてある「ICT標準セット」です。どの教室も、同じ向き・同じ場所にセットしました。実物投影機とPCを置いている専用台は、レーザープリンタの台を流用したものです。配線整備も行い、遮光カーテンも設置しました。

 そして、(図4)のようにICT環境を整えるとともに、授業改善も段階的に進めていきました。第1段階では、一斉授業に実物投影機を用い、大きく映してわかりやすく教えながら授業改善を行い、第2段階でも、同じく電子黒板やデジタル教科書を活用しながら一斉授業の改善を図り、そして第3段階では、タブレットPCを使った個別授業の可能性を探りつつ、一斉授業の改善もしていきました。このような3段階で進めることで、ICT活用の成功につながると考えたのです。

 各担任は、国語や算数、音楽や理科といった授業で、電子黒板や実物投影機を使い、実践を積み重ね、(図5)のように発表やノート指導、読み聞かせやフラッシュ型教材等で、ICTを使うようになりました。

 実物投影機があることで「全員がわかる授業」になっているかを担任にアンケート調査したところ、(図6)のように全員が実物投影機の有効性を実感していることがわかりました。

 さらに、実物投影機の有効性を実感した各担任は、(図7)に見られるように、ほぼ毎日、ほぼ毎時間、実物投影機のスイッチを入れ、黒板と同じように使うようになりました。

 とはいえ、ICTが子供を教えるのではありません。教師の視線はいつも子供に向くように心掛けています。

校務の情報化も進め、子供と向き合う時間を増やした

 さらに、(図8)が示すような校務の情報化も進めました。校務支援システムをフル活用して、スケジュールの確認や情報共有等は、各担任の校務PCで行い、出欠確認等は養護教諭が毎朝入力しています。

 これによって、子供と向き合う時間が大幅に増えました。子供たちが登校すると、教室にはすでに担任がいます。職員朝会がないので、宿題のことや家庭での出来事を、子供たちの顔を見て話し合う時間が増えました。

タブレットPCを活用し、スキルも、段階的に習得させた

 授業でのタブレットPCの活用については、第1段階と第2段階を経て、2014年度から第3段階であるタブレットPCを導入しました。プロジェクト体制を取り、札幌市教育委員会の支援の下、有識者の先生方やICT関連企業の協力のもと、検証を進めていったのです。

 タブレットPCは全部で41台です。周辺機器として、タブレットカート、無線アクセスポイント、サーバー等を設置して、子供たちが利活用できる環境を整備しました。

 事前に「タブレットを使ったことがあるか?」と子供たちに聞いたところ、「ある」と答えたのはわずか3割でした。タブレットPCに慣れていない状態で授業に導入しても、操作方法を学ぶために授業時間を使ってしまうことになります。そこで情報活用能力の習得をベースに、(図9)のように子供たちに段階的にスキルを習得させることにしました。

① 導入期(タブレットPCのルールやペン操作を学ぶ)
② 定着期(調べ学習のルールやキーボードの操作を習う)
③ 推進期(ドリルや書き込みを行う)
④ 発展期(学び合いを行う)

 子供たち全員が同じスキルを習得することで、授業でICTを活用しやすくなり、効果もより向上すると考えたのです。

 スキルが定着してきた子供たちが、タブレットPCを一番使っているのは、(図10)で示した調べ学習です。調べ学習は、PC教室ではなく、普通教室で行う方が効果的です。担任からも、「PC教室では話し合いがしづらく、個別の学習になりがちだが、普通教室なら、協働で話し合う時間を取ることができ、調べる時間と区切りながら授業ができる」との声が聞かれます。

 また、問題解決学習の中でもタブレットPCを使っています。子供たちに問題を配信し、タブレットPC上で答えを書き込み、各自のタブレットPCを持ち寄って話し合い、深め合うようにもなりました。

 この個別の使い方がさらに定着すると、子供たちはさまざまな教科でタブレットPCを使って話し合いを進めるようになりました。(図11)の左上の画像は外国語活動の様子です。子供たちは、調べたことを絵で見せながら英語で会話をしています。右上の画像は、修学旅行の行き先と日程を考えるために、タブレットPCを使いながらグループで相談しているところです。右下の画像は算数での光景で、わからない子に、わかった子が補助線を書いて教えているシーンです。また、左下の画像のように、子供たちはタブレットPCでまとめた意見や考えを見せ合って話し合うようにもなりました。

 そして、タブレットPCの動画撮影機能を活かした活用も増えています。体育の時間では、跳び箱やハードル運動の様子を動画撮影し、練習に活かしています。国語の授業では、発表の様子を動画撮影し、改善点を見つけて修正しています。理科の実験を動画撮影し、何度も見返してじっくり観察するという使い方も効果的です。

ICT活用の成果と課題

 (図12)の2014年度のタブレットPCの利用回数は、赤く記した2月に急増しています。子供のログインの方法が自動的になったため、活用回数が増えたのです。そして1年後には、複数の学年で使うことになり、利用回数も増えました。(図13)から最も多く使われたのは、社会や総合的な学習の時間での調べ学習であったことがわかります。2016年度は、(図14)のようにまだ半年ながらも前年度よりも利用回数は増え、算数などの問題解決学習での活用も増えてきました。

 タブレットPCを使う場面と、使わない場面の選別も大切です。たとえば授業の冒頭に課題を把握する場面では使わない。しかし、情報を収集する場面では、活用する。使う・使わないの場面を授業の中で明確にすることで、タブレットPCの有効性を生かした授業を、45分間で展開できるようになります。(図15)のようにスモールステップで繰り返すことがタブレットPC活用の定着につながり、ICTを日常的に活用できるようになりました。

 (図16)は3年間の検証の結果です。最初にタブレットPCを導入した5年生が6年生になり、そこで得たノウハウを次の5年生に伝え、またその次の5年生に、と繰り返すことで、タブレットPCの活用がより効果的になっていきました。また5・6年生がタブレットPCを使うことで、3・4年生がPC教室を利用できる回数が増えました。

 今後の課題としては、情報活用能力の習得や、系統性のある情報教育の推進が挙げられます。「幌西スタイル」を確立し、ICT活用を本校の強みにしていきたいと思っています。そして、本を読む、発表する、調べたことを書く、絵に描いて表現する、新聞づくり、といったICT以外の学び合いによる活動も大切にしながら、情報活用能力を系統立てて育成していくことが、タブレットPCを活用するうえでの土台となり、タブレットPCの活用を成功に導くことにつながると期待しています。

○矢野聡史・大室道夫・前田喜和・高橋純(2016年10月)
日常的なICT活用が定着した学校における一人1台のタブレットPCを用いた授業
全日本教育工学研究協議会第42回全国大会、pp.258-261、佐賀市文化会館

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