情報活用能力を「学習支援カード」で育む

意識して「情報活用能力」を育もう!

京都教育大学附属桃山小学校の木村明憲先生は、前任校に勤務していた4年前から、「学習支援カード」を使って、「情報活用能力の育成」を進めてきた。その取り組みを紹介する。

京都府京都教育大学附属桃山小学校



木村 明憲先生

情報活用の「実践力」を育みたい

 ひと目見て、「すごい!」と鳥肌が立った。上の写真を見てほしい。これは、京都教育大学附属桃山小学校の木村明憲先生が受け持つ4年生の子供たちが書いたノートの数々だ。しかもこれらはすべて、自主学習用のノートなのだ。子供たちが自宅で、自分でテーマを選び、調べ、工夫してまとめたノートである。

 いったいどのような指導をすれば、こうしたノートを書けるようになるのだろうか。そのカギは、「学習支援カード」が握っていた。

 「情報活用能力の3観点の一つ『情報活用の実践力』を育成するために、この学習支援カードを作りました」と話すのは、開発者である木村先生だ。ノート指導の話かと思いきや、「情報活用の実践力」というワードがいきなり飛び出した。そして、木村先生は丁寧に説明を始めた。

 「そもそも、『情報活用の実践力』とは何でしょうか。情報を主体的に集め、まとめ、伝えることですよね。子供たちのノートを見てください。そのすべてが、入っているでしょう?」

 木村先生の言う通りだった。子供たちは教科書や新聞、図鑑、インターネットなどさまざまな媒体から情報を収集し、グラフや図、表、手書きのイラスト、新聞の切り抜きやインターネットのコピーなどを駆使して上手にまとめ、読み手がわかりやすいように新聞形式などで伝えている。

 「『情報活用の実践力』=ICTを活用する力と誤解されがちですが、私はもっと広く考えています。主体的に情報を集め・まとめ・伝える力は、すべての教科で必要とされる力であり、ICTはその手段の一つに過ぎません。この力を身につけることが教科の学びにつながり、ひいては学力向上につながると考えています」

 そこで木村先生が開発に着手したのが、この「学習支援カード」だ。カードには、情報を「集める」「まとめる」「伝える」を3本柱に、その具体的な方法が細かく整理されている。カード上部に「4年」と書いてあることからもわかるように、各学年の発達段階や、各教科での学習内容などに合わせて、学年ごとに1枚にまとめられている。1年生版と比較すれば、その違いが見て取れる。

 「このカードは、『こういう学習活動をしよう』という指針。このカードに網羅された活動を意識して繰り返すことで、『情報活用の実践力』が自然と身についていきます」

「学習支援カード」の使い方

 では、この「学習支援カード」をどのように使えばいいのだろうか。

●全員に配布し、自宅にも持ち帰らせる

 まず、年度初めに全員に「学習支援カード」を配布する。学校では、常に机の中に入れて、いつでも取り出せるようにし、自宅にも毎日持ち帰らせる。

●見方や使い方を指導する

 配布しただけでは使い方がわからないので、まずは1~2時間かけて、見方や使い方を指導する。

●正の字で回数を記録させる

 正の字で、回数を記録できるのも、注目ポイント。どの活動を何回行ったか、一目瞭然。すべての活動をまんべんなくできるし、正の字が埋まっていく楽しみも味わえる。

●授業計画に、活動を盛り込む

 学習支援カードに記載された活動を、授業計画に盛り込む。活動のイメージを具体的に持たせるためだ。授業で学習支援カードを使う際は、「今日は、『A・ウ・5』の学び方を取り入れるようにしましょう」などと、具体的に指導する。

●具体例を示したハンドブックも用意

 活動の具体例を写真入りで紹介した「情報ハンドブック」も配布し、イメージをつかませる。

4年生版の「学習支援カード」(左)と1年生版の「情報ハンドブック」(右)より

カギを握る「ルーブリック」

教室の壁に貼られた、木村学級の〝6月17日時点〟の「ルーブリック」。

 「学習支援カード」の使い方に慣れてきたら、いよいよ自主学習の開始だ。

 「好きなテーマを自由に選んでまとめさせてもいいし、授業の内容に関係するテーマを与えてもいい。今日の学びを復習して、ポイントを新聞にまとめて、と指示することもあります」

 さらに木村先生は、さまざまな「仕掛け」を工夫している。その一つが、「ルーブリック」だ。

 これは評価基準であり、上に行くほど、高い評価になる。

 「このルーブリックに沿って、教師は子供が提出してきた自主学習ノートをチェックし、評価とコメントを書いて返却します」

 するとどうなるか。子供は、改善点を自覚し、もっといい評価を得ようと努力するようになる。しかもこの「ルーブリック」は、初めは教員が示すが、授業の中で子供たちが学習目標を明確にしていく中で、子供たちと話し合いながらどんどん更新していく。たとえば、年度の最初はS・A・Bの3段階評価からスタートし、上達してきたら、上位の評価を増やしていくのだ。

 メリットは他にもある。授業内容に合わせて「ルーブリック」を追加することで、「学習支援カード」が示す活動と授業内容がリンクしやすくなる。たとえば、算数でグラフを学習したら、「ルーブリック」に「さまざまなグラフの特長を意識しながら、使い分ける」という評価基準を入れる。すると子供は、授業で学んだ知識を自主学習で活用するようになる。算数で学んだことを、社会科のまとめで活かすといった、教科横断的な活用もできるようにもなる。

 「『ルーブリック』を工夫することで、学習の幅を広げることも、深めることもできます。さまざまな教科で『情報活用の実践力』を鍛える活動を取り入れたり、一つの学習にさまざまな活動を盛り込めるのです」

 木村先生によれば、どのような評価を新たに追加すればいいか、子供たちと一緒にいつも考えているという。「ルーブリック」によって、「自分たちで評価し、成長を自覚し、次の目標を設定し、努力するサイクル」を作ることができるのだ。

 ちなみに、この「ルーブリック」は、教室の壁に貼ったり、印刷して配って、自主学習ノートに貼らせたりするという。常に「ルーブリック」の評価基準を意識させることがねらいだ。

ノートを見せ合い、学び合う

教室の壁に貼られた、木村学級の〝6月17日時点〟の「ルーブリック」。

 もう一つ、忘れてはならない仕掛けがある。子供同士で自主学習ノートを見せ合ったり、学び合ったりする場面を多く設けることだ。

 「私の学級では、教室の壁に『がんばり紹介』というコーナーを常設し、高評価を得た子供のノートをコピーして掲示しています。お手本を見せることで、『こういうふうにすればいいんだ』と『ルーブリック』の評価基準を具体的にイメージできますし、友だちのノートから良い点を学べます」

 子供同士で自主学習ノートを見せ合う活動も、頻繁に行う。この日の授業では、4年生になってからの3か月間で書いたノートをグループ内で見せ合い、自分が工夫した点を伝えたり、友だちのノートで良いと思った点をほめ合ったりしていた。

 「見られる前提でノートを書くことで、『情報を伝える』トレーニングになりますし、お互いに評価し合うことで、自尊感情や他尊感情も刺激されます」

子供たちの成長と変化

ノートを見せ合う子供たち。「私のノートを見て!」と、みんな自信に満ちあふれていたのが印象的。

 3か月間、自主学習ノートに取り組んだ木村学級の子供たちに感想を聞いてみると、「いろいろな情報を集めて、まとめる力がついた」「わかりやすいように伝える工夫ができるようになった」との答えが返ってきた。まさに「情報活用の実践力」が身についてきたと言えるだろう。「ノートにまとめることで授業の内容がよくわかって、テストで100点が取れた」という感想もあった。学力向上にもつながっているようだ。

 「保護者からも好評で、『一人で勉強できるようになった』『集中して勉強するようになった』とほめてもらいました。子供たちは自主学習が大好きになるんですよ。保護者から『早く寝なさいと叱っても、自主学習ノートに2時間も3時間もかじりついて離れない』と、心配されたこともあります」

 勉強が苦手な子供でも、自主学習ノートは一生懸命頑張るという。

 「教師や友だちに『いいね!』とノートをほめられると、すごくうれしいし、やる気になるんですよ。授業であまり発言しなかった子供が、素晴らしいノートを書いてきて、みんなに一目置かれ、それをきっかけに授業にも積極的に参加するようになったこともあります」

教師が自由にアレンジできる良さ

 「学習支援カード」や「ルーブリック」は、木村学級だけでなく、京都市内の公立小学校や県外にも広がりつつある。この日も、多くの先生が見学に訪れていた。なぜか。目に見える効果が上がるのはもちろんだが、子供たちの実態などに合わせて、教師がアレンジして使いやすいからだ。

 「『学習支援カード』で行うべき活動は定めていますが、あとは教師の自由です。たとえば僕の学級では、毎日、自主学習ノートを書いていますが、低学年の先生は週2回にしています。自主学習のテーマも、すべて自由にしてもいいですし、授業に関係のあるテーマを指定してもいい。自主学習だけでなく、授業の中で活動する場面を増やすのも構いません。評価基準である『ルーブリック』も、子供たちのレベルや、重点的に学ばせたい事柄などによって、自由に設定できます」

 子供同士の学び合いも、全員のノートをコピーして配ったり、評価上位者の月間ランキングを掲示したりしている先生もいるそうだ。教師も工夫のしがいがある。

 「『情報活用能力の育成』は、今後ますます求められていくでしょう。教科横断的な学習や、アクティブラーニングのような主体的な学習、問題解決型の学習も、必要性が高まるはずです。これらすべてに、『学習支援カード』は有効だと自負しています。すべての教科に共通する『情報活用の実践力』が鍛えられ、自ら課題を見つけて目標を設定し、主体的に学ぶ姿勢や習慣も身につきます。多くの先生方に、試してもらいたいですね」 木村先生は「学習支援カード」の今後の広がりに期待を寄せている。

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