公開日:2007/10/01

韓国にみる 教育の情報化---- リーダーシップを発揮するKERIS

教員の「昇進」には「教員研修」受講が必須
コンテストやイベントでは賞金や海外旅行も

97年、経済危機からの脱却を目指し、教育の情報化に積極的に取り組んできた韓国。教員1人1台PCの整備や早くからの普通教室ネット接続、大画面ディスプレイや提示装置の各教室完全配備、デジタルコンテンツの普及----と日本からするとうらやましい状況だ。KERIS(教育の情報化を推進する政府機関)がリードしてきた韓国の情報化の動きは、いまや日本にとっても目が離せない。その反面、韓国がこれまで抱えてきた問題、これから解決すべき課題は、日本の情報化の現状と重なるものが多いようだ。韓国がこれまでの課題をどう解決し、これからどう動いていくのか、日本が学ぶべき点は多い。

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 韓国の教育情報化を支えるKERISの取り組みについて、韓氏は時折笑みを交えながらも直面する課題をシビアに熱っぽく語る。決して現状に満足していない様子は意外なほど。歯に衣着せぬ物言いは、韓国の政策にも通じるようだ。


 

インフラを活かす教育コンテンツを

---- まずKERISの役割について、教えてください

 「政府の政策施策により、インターネット等のインフラは整備されましたが、インフラを活用するソフトウェア----特に学校で使える教育コンテンツが不足していました。そこでKERISでは整備されたインフラを活用するため、その第一歩として先生向けの教育コンテンツの制作・提供に取り組んだり、情報教育に関する教員研修のカリキュラムを作成しています。また他にも教育コンテンツがどのような評価を受け、運営されているのか、教育環境の違いなど現場の要求を吸い上げながら教育人的資源部(※)へ提案しています。企画段階では、教育人的資源部、KERIS、教育委員会の3者で話し合いの場を持ちつつ、教育の情報化を進めています」

システム、コンテンツの次は教員研修

---- インフラ整備とコンテンツ制作は先生方にどのような影響を与えましたか

 「教育コンテンツは教育情報総合サービス『エデュネット』にある『ティーチャー・エデュネット』を通して、先生方に提供しています。その数は3年間で18万コンテンツにも上りました。KERISや現場の先生が制作したものから、民間企業のソフトウェア、国営放送KBSの放送コンテンツなど、多くの先生方に利用してもらっています。

 また実際に、先生方にICTを活用した授業を実践してもらおうとすると、やはり年配の先生には抵抗感がありましたし、若い先生の中にもICTに不慣れな先生もいました。そこで、予算面での後押しを受けながら、情報教育に関する教員研修が実施されるようになりました」

---- 韓国の教員研修の仕組みを教えてください

 「国の定めにより、自治体単位で全教員の33%は情報化の研修を受けることになりました。1人の先生は3年に1度、必ず研修を受ける機会が与えられていることになります。研修で先生は15×2の30時間か、15×4の60時間のうちどちらかを選択できます。基本の研修30時間では、オフィスソフトやメールなどの基本操作を習得できますし、もう少し深く学びたい人は、60時間の研修で国語や英語などの教科別の特性に応じたICT活用を学べます。  ただ近年、先生方の研修が他にも増え、今年からその割合が33%から25%に下がり、4年に1度受ける仕組みになりました。また、昇進制度により、研修を受けた先生には昇進のチャンスが与えられています」

管理職向け研修や学校評価で全国的に拡散

---- 昇進制度は日本にはないものですが、どのような制度ですか

 「韓国では、一定の点数を得ると、先生から教頭、校長、教育委員会へ昇進するチャンスがあり、研修を受講した先生には、テストの結果に応じた点数が与えられています。また、各分野での研究で一定の成果を得ることでも点数が与えられ、それら点数の総合点で昇進することができます。点数の累積が昇進の条件として求められている、いわば先生方を管理する1つのプロモーションとも言えますね。

 研修をより効果的にするためには、強制するだけでなく、先生方の自発的な参加が必要になります。そこで私たちはICT活用に関するコンテストやイベントを数多く開催して、自発的な参加を促しています。企業が実施するものでは、入賞者へ賞金や海外旅行券などが贈られていますし、公的機関で実施するものでは、昇進に関係する点数が与えられるようになっています」

---- 日本では管理職のリーダーシップが求め られていますが韓国ではどうでしょうか

 「韓国では、校長先生が動かないと、その下の先生方も動かないという学校特有の課題があります。これは大きな問題でした。校長先生は、伝統的な教育だけを受けている先生が多く、特にICT技術から離れている人たちです。そこで校長先生を対象にした研修も行いました。研修を受けて情報技術の良さを知り、現場の先生を理解するようになったことで、実質ICT教育の普及に繋がりました。

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 次に行ったのは学校の評価です。公表はしていませんが、どこの学校で情報化が進んでいるのか、学校の施設、授業方法、校長先生のマインドなど全てを総合的に評価して、学校評価としています。それにより全国的に活用されるようになりました。

 こうした取り組みにより、今では韓国のどの学校でも2〜3割の授業でICTを活用した授業が行われるようになりました」

※日本の文部科学省に相当する中央政府の行政組織。01年、教育部から教育人的資源部に名称変更。地方(特別市、直轄市、道)には、教育庁が置かれている。


 

教育情報センター・エグゼクティブ・ディレクター 韓 泰 明 氏

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